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自動車業界の躍進に後 押しされる電子機器業界

―開催イベントに 見る業界の動き―

ここ数年、業績が好調な自動車業界を背景に、電子機器業界も自動車関連のアイテムが注目され、順調な伸びを示している。ここでは、近年の展示会・イベントの推移を見ながら、業界の動きを探ってみる。
業界の好調さを反映して、自動車関連機器の出展が増大 
昨年から今年にかけて開催される電子機器関連の展示会やイベントでは、自動車関連の製品や技術紹介が多く見受けられるようになってきた。しかも、車関連以外の展示会でも自動車関連の来場者が多くなる傾向も顕著になっている。
 しかし、元来自動車関連を主たる対象としていない企画のイベントに、なぜ自動車関係業界の関心が強いのかという疑問が残る。ここには、様々な電子機器に対して自動車業界が注目し始めたことに関わりがあるのだろう。開発当初から自動車業界での採用を意識したわけではない製品や技術が、ハイブリッド車や電気自動車の開発をしていた担当者の目にとまり、専用技術との違いがひとつの差別化になって映ったと考えられる。そして、自動車関連のイベントでは得られない、半導体技術や計測・測定技術、モータや電源、ノイズなどの技術にも注目するようになり、それにつれて来場者数を伸ばしてきたと見て間違いないだろう。
 先般開催されたTECHNO-FRONTIER 2007でも、その動きが表れている。イベント自体がこの動きに敏感に反応し、自動車関連の展示会やシンポジウムに注力したこともあろうが、講演なども自動車業界を強く意識した演目が目立つようになっていた。これは来場者、出展社双方からの要望を反映させてできあがった形態と主催者側では見ている。
 自動車の電子機器関係に対しては、他の分野と比べものにならないくらい要求が厳しい。車は人の命に関わったり、対抗性や天候の問題なども要求されるため、技術的にクリアしなければならない課題も多く、一般的な部品とは違う要素が要求されることになる。近年のイベントでは、製品を展示する見本市的な形態から、セミナーやシンポジウムをベースとした形態に変わっている。ただ見るだけにとどまらない最近のイベントでは、自動車業界側の来場者と技術を提供する出展者側で、自動車の設計に関わる問題点クリアに向けての情報交換も可能なので、必然的にイベント開催内容への要求が強く高くなってきたのではないかと考えられる。
 また、自動車関連の技術の中には他の分野でも応用できる技術が多数あり、実際に自動車用の技術がブレークダウンされて民生品に応用されているケースも多い。自動車に使われていることで、安心・安全というお墨付きが得られたということもあるのだろうが、カーエレクトロニクスの広がりが民生品に及ぼす影響も大きいということになる。
 この流れに乗って、半導体産業も自動車関連の後押しを受けている。現在の車は電子部品の塊のようになっており、そこで使用される半導体も年々数が増えていく傾向にある。しかし、前述のように安全に対する規格が厳しいため、デバイステスタなどへの要求も当然のことのように厳しくなるとともに、進化や多様化も激しさを増している。SoCテスタメーカーには、技術的な面の追求だけではなく、リードタイムやコストまでを含めたトータルな提案で対応することが求められている。
 現在、業績が好調の自動車業界に後押しされる格好で推移しているこの傾向だが、将来的にはロボット関連の分野でも同様のうねりが起こりそうだと見るイベント担当者もいる。自動車を走るロボットと考えれば、これにセンシングやアクチュエータなどが重ね合わせられると、ロボットを構成するデバイスが揃うことになるためで、それほど遠い将来のことではないといった予測もある。
電源関連も様々な分野から注目される分野 
電源も自動車業界と関連して注目を集めている分野だ。その背景として、自動車に電装品の数が増えてきていることと、車のインテリアやオーディオ、ナビゲーションシステムが中心だった電装品が、最近はハイブリッド車などで駆動部分に電気の要素が入ってきたことがあげられる。
 これは、電源がさまざまな分野と関連しているためと考えられる。技術的な動きを反映してのことと見るのが正しいだろうが、技術的な部分だけではなく製品として採用される分野がますます増えてきていることもその要因となっていると考えられる。さらに、電源部品が小型化されて搭載しやすくなったという要因とスイッチング電源が中心となって注目されているといった背景も絡んでいる。用途としても、スイッチング電源を従来採用していなかったオーディオ向け製品にも搭載を検討する話が出始めているように、ユーザーの裾野が広がりを見せていることも格好の追い風になっていると考えられる。
 この電源製品の動きと歩調を合わせるように、電源関連の半導体でも新しい技術が紹介されるとともに、材料関係でも新しい技術が紹介され始める傾向がある。特に材料関連では、直近ではなく数年後に向けた新材料や新技術に対する注目があり、動きは見逃せない。
 電源技術は日々確実に進化しているとはいうものの、業界の常識を覆すような驚くべき新技術が発表されたわけでもない。現在の急伸の確たる原因を特定するのは難しいが、考え方や見方を少しだけ変えた製品の出現が業界にとっては画期的ととらえられたり、信頼性に対する関心の高まりもその要因のひとつではないかと考えられるだろう。電源の中でも、特に電池分野にその動きが著しいといわれている。電源機器は2002年頃に海外メーカーにシフトおり、国内メーカーにとっては厳しい状況にあったが、近年の信頼性や性能重視する考え方が国内メーカーへの回帰につながっているのではないかと見る向きもある。
 このような動きに敏感に反応し、イベント会場を利用して『電源セミナー』を開催している催しもある。対象は初心者だが、団塊世代の大量定年退職でアナログ技術者の減少が問題視される中、質問の向けどころがないといった技術者も対象に開催されており、該当する技術者たちからは高く評価されているという。昨年から今年にかけて開催されたイベントでも数回開催されているが、いずれの会場も人気を博す企画となっている。
国内でも注目されるようになった機能安全
 イギリスで提唱された機能安全も、昨年末あたりから徐々にではあるが注目され始めている。
 機能安全は、1980年代以降に発生した多くの産業事故の発生とコンピュータ技術の普及に密接に関係して、安全の専門家によって考え方が検討されもので、2000年までに国際電気標準会議(IEC)によって制定された安全規格のことである。
 プラント、鉄道、産業機械の分野では機能安全の規格が制定されており、機能安全に基づいて開発・設計が行われている。また、自動車や医療機器をはじめ、半導体製造装置やロボットなど、幾多の産業分野で規格の制定が進んでいる。
 現在IEC61508の考え方に基づいて、英国やドイツなどでは適合認証が行われるなど、規格やガイドラインの制定が続いていることを考えると国内においても、今後必須の技術になると考えられている。
 ISO9000、ISO14000、ISO27000に続く国際的な企業コンプライアンスとして注目されているだけに、今後見逃せないアイテムの一つだ。日本機能安全でも、組み込みシステムの信頼性・安全性を向上させる国際規格のIEC61508が規定するシステム開発技術として機能安全をWebサイトなどでも紹介しているので、一度閲覧してみることをおすすめする。
 今までは、高速化やリアルタイム性など、技術の進歩を目指していたが、最近では開発・製造した製品に対する安全性にも注力しようという動きが起こっている。これには、国の機関でも力を入れようという動きが顕著になってきた。
 製造物の安全に関しては、動作しなくなったり壊れた時、人体に及ぼす危険性という問題がある。至近な例では、機械が止まったことによる混入物の問題や、危険性が指摘された電化製品の回収などがその表れである。
 そこで、『機能安全』のもとに、開発段階から安全を視野に入れておくという考えで、原子力発電などの開発では、かなり以前から取り上げられ、その考え方も相当進んではいるといわれている。
 電子機器のシステム技術は今後、医療機器ネットワークなどにも広く応用されていくことが予想されているため、安全性がきわめて重要度を増すことになる。さらに、自動車業界では、自動運転や車車間測定などの技術が進んでいく中で、停止してしまった時にも事故を回避できる安全性などへの対処が強く求められている。製造物は必ずいつかは壊れるが、その壊れた時に、いかに安全であるかということが重要と言われ始めている。
 安全確保の手段として、二重のシステムを搭載し、一方が壊れた時にもう一方を起動させるというフェイルセーフという考え方があるが、この『機能安全』という考え方は、今後の電子機器分野で重要な規制になっていくものと思われる。
企業のグローバル化で注目される国際化路線
 グローバル化によって、企業の生産拠点が海外へとシフトしているため、生産のための電子機器にもグローバル対応が求められるようになって久しい。
開発は国内で行ったとしても、海外で生産する場合は国内の環境をそのまま移行することができないという問題もある。たとえば、量産ラインで使用する測定器なども、生産する現地の言葉で表示されるようでなければ、効率がダウンしてしまう。
最近のイベントに参加する海外からの来場者からも、表示言語が何か国語に対応しているかという質問が出るということを見ても、その重要性がわかろう。国内で使用していた環境をそのまま海外の生産拠点に移行し、その場で表示だけを現地の言葉にできれば、生産の立ち上がりがスピーディで、効率的ということだ。このことを反映するように、最近では数カ国に対応した電子機器が当然のようになってきた。
また、機器のメンテナンスについても現地対応が求められている。世界各地にサポートセンターを設置すれば済むことになるが、それではあまりにも経費がかかりすぎるし、現実的ではない。
そこで、世界標準のプラットフォームを採用する動きがある。規格制定が全世界的なものなら、国内からすべてのパーツやモジュールを送らなくても、現地で調達できることになり、時間的な問題もコストの問題も解決できる。他社との競合関係から、社内でのオープン化を推進していた企業も、次第に外部に向けたオープン化を視野に入れ始めているといった動きも起こりつつある。
開発のリードタイム、コスト削減、人的資源の有効活用など、厳しい要求を解決するための手段もグローバル化に向けで動き出していると見るのは早計だろうか。
デジタルコンバージェンスの進化
 デジタルコンバージェンスは、これまでにそれぞれが単独で成り立っていた技術や産業、市場をデジタルで共通化し、新しい産業や新しい市場に収束していく過程を表した言葉だ。
 これはコンピュータと家電、放送・通信などがボーダーレス化し、新しい分野・新しい産業・新しい市場が形づくられようとしている情勢を背景にしたものである。
 その第1段階は情報処理の「デジタル化」で、インターネットや他の情報家電につながる「ネットワーク化」が第2段階、そしてソリューションサービス提供事業者が参入し、さまざまな情報サービスが提供される「プラットフォーム化」の第3段階へと進み、現在ではデジタルコンバージェンスの最先端情報発信基地である日本から世界に向けて、社会や生活・ビジネスを変え、新しい産業・新たな市場を創造していく大きなうねりが起きようとしている。
 電子機器分野でもこの潮流の影響は少なからず受けることになる。様々な分野の技術やソリューションが融合して、新しい形に収束する様子は様々なシーンで目にすることができるようになってきた。
 技術の融合は新たな計測・測定技術を必要とし、求められる解決策を導き出すための大きな力となりうる。しかもそこには、現代を反映するように、リードタイムの短縮やコストセーブの問題も突きつけられる。
 蓄積されてきた技術を余すところ無く生かしながら、ネットワークとプラットフォーム化を推進し、ユーザーにとってもメーカーにとっても最大限のメリットとベネフィットを享受できるソリューションが期待されていることになる。
 先端技術の研究・開発から、日常生活の隅々にまで利用され、幾多の豊かさをもたらしている電子機器や、それを根底で支える計測技術、組込み技術などは、日本の技術が世界の中でも高い位置に評価されている。その一端を身近に感じられるイベントや展示会が今後どのようなメッセージを伝えていこうとしているのか、常に注視していく必要がありはしないだろうか。
デジタルコンバージェンス(デジタル融合)