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ハンディ型スペクトラムアナライザとEMIトータル試験システム

マイクロニクス株式会社

様々な製品の開発から、現在は無線通信分野に販売ターゲットを絞って展開しているマイクロニクス株式会社。今回はその中からハンディ型スペクトラムアナライザとEMI試験システムについて製品と技術を代表取締役社長 田仲克彰氏に話を聞く。
代表取締役社長
田仲 克彰
クリエイティブとユニークが製品作りのコンセプト
 マイクロニクスは、無線通信分野を中心に技術ターゲットをマイクロ波技術においており、マイクロ波技術や無線通信分野の商品カタログには、必ず「C&U」というマークを付けている。これは「Creative & Unique」の頭文字で、他社にはない独創的でユニークな製品開発を目指すということを表現している。クリエイティブの事例として、今回紹介する「ハンディ型スペクトラムアナライザ」がある。この製品は、当時の通産相から開発助成金を受けて開発を進め、グッドデザイン賞を受賞した。そのほかETCテスタもクリエイティブに当てはまり、12,000台の販売実績もある。この製品は、ディーラーなどでETCを付けた際、最終チェックに使用する検査器だが、自動車販売店や大型カー用品店、またトラブル対策用にとJHにも納めている。このETCテスタも東京都ベンチャー技術大賞や中小企業研究センター賞を受賞している。
 恒温槽もクリエイティブな商品の部類に入る。マイナス40℃〜85℃まで対応でき、温度や湿度を保つことができる装置で、マイクロ波とは無関係に思われるが、電波暗箱と一緒に使うことにより無線電波の信号品質を温度あるいは湿度環境下で評価することを目的としている。電波吸収体などが入っている電波暗箱の中に恒温層を入れ、その中に携帯電話などを入れて通信試験を行うのだが、一般の恒温槽だと室内が金属なので反射が多く、また、ノイズも多いので通信試験はできないが、同社の製品は樹脂製のため通信の試験を行うことができる。
「ユニーク」といえる製品は従来からあったが、機能やある点がほかと変わっている製品には、ETC試験システム、EMI試験システム、先ほどの電波暗箱、高速プログラマブルアッテネータなどがある。ETCテスタは2000年くらい、スペクトラムアナライザは2001年くらいに製品化し、売れ筋商品としては最初の方のものだ。以前は、それ以外の製品もあったが、廃罷してマイクロ波関係のものに集約してきたという。
 EMI試験に関するものはすでに世の中に出ており、一般的なのは電波暗室で行われるものである。電波暗室やそれに関わる測定器などを購入しようとすれば1億5,000万円くらいかかってしまう。電波試験所などの電波暗室を使って測定すれば、認証されたことになるが、正式な試験所で検査・測定するまで、予約をしてから1、2ヵ月待たされることが多く、費用も100万円くらいかかるのが現状だ。
 しかし、デバッグのときに使うトータル的で安いEMI試験装置は無いことが分かった。トータル的とは、電波暗箱やスペクトラムアナライザ、アンテナ、ソフトウエアなどは単体としてすでに販売されているが、それらをひとまとめにして、全体をキャリブレーションするシステムという意味である。そこで、性能は若干劣ってももっと手軽にデバッグができ、トータル的で小型のEMI試験システムの開発を始めたという。

小型・軽量・バッテリー動作・低価格の

ハンディ型スペクトラムアナライザを

 スペクトラムアナライザを作りたいと考え始めたのは会社を設立する前からだという。「会社を立ち上げても資金の関係でなかなか作れませんでした。そのとき、たまたま国から課題対応型開発助成金が出て、それにより取りかかることができました。そのときに考えたのは、これからどんどん周波数が上がっていき、マイクロウェイブに向かっていくということです。またマイクロ波の中でも、無線情報通信機器が進歩していくだろうと考えていました」と田仲氏は語る。その当時は大型の携帯電話が登場し始めたころで、市場はそれほど大きくはなかった。しかし、携帯電話は、やがてはサービス事業も含め成熟していくと考え、その試験器としてスペクトラムアナライザが必要になってくると考えた。開発にあたり、性能、機能面では他社と同じではいけないと思い、ベンチタイプを最初から考えずハンディ型に注力していった。

 最近の情報無線通信機器の普及により、サービス用でもスペクトラムアナライザが使われるようになった。サービス用途でスペクトラムアナライザに要求されるのは、小型・軽量・バッテリー動作・低価格である。同社のスペクトラムアナライザ『300シリーズ』は、これらの要求を全て満たしており、しかも、大型ベンチタイプに引けを取らない性能と機能を備えている。
 300シリーズは4機種あり、『MSA338』というのが一番最初のモデルで、国内が1に対して、海外が2という割合で出荷されている。測定周波数帯域は50kHz〜3.3GHzである。『MSA358』は周波数帯域50kHz〜8.5GHz、『MSA338E』はMSA338にEMI試験用機能を搭載している。『MSA338TG』は今年発売されたもので、MSA338にTG(トラッキングジェネレータ)を搭載したもので、MSA338の機能はそのままで、さらにフィルタや増幅器あるいはそのほかの電子デバイスや電子回路の振幅周波数特性の測定と評価を行うことができる。
 現在パネルはモノクロだが、今年、300シリーズの4機種とも、18箇所くらいの追加・修正を行い『400シリーズ』としてカラーパネルの機種を出す予定だ。パネルを5.7インチBGAのカラーLCDで、N型コネクタに変更、バッテリー駆動も現在の2.5時間から4時間になる。また、USB端子を搭載し、USBメモリーが付く。

 

 

3.3GHz/8.5GHz EMI用スペクトラムアナライザMSA338/358
究極の小型化を開発

 開発に2年半かかっており、一番苦労した点は、安くて小型、そしてサービス市場を狙っているので、バッテリー駆動にするため低い消費電力にしなければならなかったことだという。「普通使ったことのない測定器の開発には抵抗があるものですが、スペクトラムアナライザの開発に取り組む前にすでにETCを製品化していたので、社員のマイクロ波に対するアレルギーはありませんでした。いずれにしても、あの小さい筐体に部品をよく納めたと思っています。技術誌で機器を分解して紹介するコーナーに、製品化し1、2年くらいしてから、掲載してもらったことがあります。そこで『よく詰め込みましたね』と言われたことがあります」と田仲氏は話す。
 2001年に登場してから約6年経っており、オシロスコープのスパンはもっと短いので、ロングセラーといえるだろう。400シリーズが登場しても、300シリーズは引き続き製造していこうと考えている。田仲氏は「これだけ長く続いたのには、おそらく、最初の仕様の作り方が良かったというのがあります。しかし、価格設定には相当苦労しました」と話す。登場から6年が経っているが、部品は登場当時とまったく変わっていないという。キーコンポーネントは自社専用部品で、それ以外は一般部品を使用している。キーコンポーネント部品の開発期間は1年半くらいかかっているという。
 同製品は、アプリケーションごとに違うので一概にはいえないが、たとえば、エレベータの実験は大型なので屋外で行われているが、そういうところでデータを取るときに適しているという。そのほかに特殊な使い方として、変電所のコロナ放電の測定にも利用されているという。また、システムとして組み込むこともでき「工場には調整検査ラインがあり、そこにある機器はすべて大型で200万円前後しています。しかし、当社の製品にはすべての機能が盛り込まれているので、それの代替することもできます」と田仲氏は言う。

 

EMI試験システム MR2300

デバッグに使用するEMIトータル試験システム
 EMC試験はEMC試験とEMS試験からなっている。EMS試験は、ほかから電波を受けてEUT(被測定装置)が誤動作するかどうかを評価する。EMI試験は、EUTが不要なノイズを出していないかをチェックする。EMIはさらに二つに分かれ、一つは空中を伝わって出ていく放射性ノイズで、もう一つは、電源ラインから漏れる伝導性ノイズである。EMI試験はこの二つのノイズが定められた規格値を超えていないかどうかの評価を行うもので、EUTがほかの機器の動作や無線通信に対し著しい妨害を与えないことの保障を目的としている。
 EMI試験には従来、二つの方法があり、一つは電波暗室を使った正式な試験である。この正式試験の欠点は、予約してからテストするまでの待ち時間が長いことと、高価であるということだ。自社でシステムを持とうとすれば、システムにもよるのが、電波暗室と測定設備を含め5,000万円〜1億5,000万円くらいかかってしまう。
 もう一つの方法である、事前に問題点をつぶしておくPrecompliance用EMI試験システムは以前からあったが、トータルのものはなく、たとえばアンテナはある会社から出ていて、スペクトラムアナライザはほかの会社から出ているといった具合であった。そこで同社は、EMI試験システムの開発に取り組んだ。
 システムとして大きく分けると電波暗箱とスペクトラムアナライザからなり、両方とも同社の既存商品として持っていた。電波暗箱はETCと同時期の2000年くらいに商品化しており、スペクトラムアナライザは先に述べたように2001年には製品化している。「スペクトラムアナライザを扱っている会社は世界でも4社くらいしかなく、そこがトータルシステムを作り上げなければ装置として完成しないと思いEMI試験システムの開発に取り組みました。スペクトラムアナライザでは、既存商品をEMI試験用に338Eとして改造してあります。
 これまで、事前チェックとして単純な方法で試験していましたが、それではばらつきが大きく評価しづらかったのです。また、検査までに時間がかかるということもありました。そこで、自社で使うためのシステムとして欲しいということも開発に取り組んだ理由としてありました」と話す。
 同社のEMIテストシステム『MR2300』は電波暗室と測定器の両方を備え、アンテナ、LISM、EMI用PCソフトウエアなどすべてが揃ったトータル試験システムだ。
 同テストシステムはEMIの放射性と伝導性の二つの測定ができ、放射性妨害ノイズ試験の方は、電波暗箱と広帯域アンテナを使って30MHzから1GHzの帯域で測定することができる。伝導性妨害ノイズ試験は、ラインインピーダンス安定化回路網(LISN)を使って、150kHz〜30MHzの帯域で測定することができる。
 放射性妨害ノイズ試験で重要なのはアンテナで、小型で30MHz〜1GHzに対応している広帯域のアンテナを自社で開発している。広帯域アンテナはすでにあるが、かなりの大型で、縦横1.7mくらいあり、電波暗箱に入るような大きさではないので、自社で小型のアンテナを開発した。「これは自社で付けているのですが、変型Y状モノポールアンテナという名前にしています。アンテナの開発だけで1年半かかっています。シミュレーションを繰り返し、意外とこれが電磁界シミュレーションに合いました。モノポールにしたのには、小型にできることがあります。円形モノポールは失敗しましたが、これは完璧です。
 現在は、国際規格では測定周波数範囲が30MHz〜1GHzなのですが、今度は30MHz〜3GHzに変わると思うので、これに対応しなければなりません」と田仲氏は話す。
 このEMIテストシステムの一番のメリットは時間とコストの削減で、なおかつ手元に置いてデバッグができるということだ。手元でデバッグできるということは、一番コストのかからない対策となる。
 同社の経験や一般的に見て、EMIに関する問題点の数や対策時間はEMSの5〜10倍という。つまり、EMI試験が通るということはEMC試験としては80〜90%完了したといえる。そこで、同システムではEMI試験に特化したシステムになっている。
 田仲氏は「EMSというのは、ほかからのノイズで自分が誤動作しないということです。これは当社の経験で、外部のノイズで誤動作するようなことはありません。普通の対策ですべて済んでしまっているので、それで問題になることは少ないのです。ところが、EMIの方ではいつも引っかかります。なぜEMSをやらないかという理由もここにあります」と語る。
 EMSのときには、おかしくなっても元に復帰すればよいという考えがあり、たとえば、ほかからのノイズでテレビの画面が乱れ、ノイズがなくなった途端、画面の乱れがなくなればそれでよいこととなる。ところが、テレビから不要な電波は一切出してはいけない。
 電波暗箱に関しては、小さいものを測るMY5310と大きいものを測るMY5410の2種類用意している。小さい方がよく売れているが、エレベータに乗らないことがあるという。そのため、5310Sというのがあり、2分割できるようになっているものだ。「これはユーザーの要望で、分解して運び、現場で組み立てるようしたもので、当社は要望に合わせいろいろなタイプを用意しています」と語る。

 実際の電波暗室と同テストシステムとの放射ノイズ測定の比較を、CNE(比較ノイズ放射器)を使って計測した結果、ほぼ同じデータ結果が得られた。そのため、同テストシステムをノイズ対策のためのデバッグツールとして使用することは非常に有効であることが確認できた。

 バージョンアップされるスペクトラムアナライザ『400シリーズ』、標準規格に準拠し安価なデバッグツールとしてのEMIテストシステム『MR2300』のこれからに注目したい。

 

スペクトラムアナライザ
「300シリーズ」の中
キーコンポーネントの自社専用部品「MICRONIX」

 

広帯域アンテナ

MR2300での測定結果

電波暗室での測定結果

MR2300と電波暗室の放射ノイズ測定比較