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半導体計測技術
LSIテストシステム 『TS6000シリーズ』

横河電機株式会社

 横河電機のテスタ事業には、メモリーテスタ部門、液晶ドライバデバイスのFPDドライバテスタ部門、イメージセンサテスタ部門、ロジック、ミックスド・シグナル、RF(Radio Frequency)デバイスを含めたSoC(System on a Chip)テスタ部門の四分野があり、製品開発を行っている。今回は、SoCテスタを中心に同社–アピールポイントに関して、ATE事業部 システムLSIセンター 課長 沼田 宏之氏に話を聞く。  

ATE事業部システムLSIセンター課長
沼田 宏之

 同社のSoCテスタは、TS6000シリーズとしてラインアップされている。
 RF分野の商品は『TS6900S』で、WLAN、ワンセグ、携帯電話、Bluetooth、車載用デバイスなどを測定するRF専用テスタである。アナログ周波数でその下に位置付けされ、主にミックスド・シグナルのテスタとして『TS6800』がある。このテスタのターゲットは、DVD FE、TV/VTR、モータドライバ、車載用デバイス、電源用デバイスのテストである。これらのテスタよりも高いデジタル周波数を測定するのが、同社の現在の主力製品であるSoCテスタ『TS6000H+』だ。これは、デジタルTV、1チップ DVD/DVD BE、携帯電話ベースバンド、デジタルスチールカメラ、デジタルオーディオなどのデジタル家電をターゲットセグメントとしている。

コストパフォーマンスが高い『TS6000H+』

 『TS6000H+』の特徴として、一つは高いコストパフォーマンスがあげられる。
 テストする半導体にどういったテストパターン印加ができるかという性能指標のひとつとして最大テスト周波数がある。同商品は基本テストレート周波数が125MHzのテスタである。ピンを減らさずに250MHzまで出すことができ、DUT(Device Under Test)から出てくる信号を判定することも250MHzで行える。また、ベースレートの125MHzの3倍である375MHzや6倍の750MHzといったデータレートにも対応が可能だ。
 タイミング性能としては、空冷でありながらOTA(Overall Timing Accuracy)が±350psと高精度で、ドライバ、コンパレータはそれぞれ±175psという高精度になっている。
 パターンメモリについては16MWから、最大128MWまでと、クラス最大の大容量をもっている。スキャンによる故障検出については、スキャン用のオプションがある。これは、ピンの割付によって深さが変わるもので、32I/Oパスの64chの場合は256MW、ピンが半分になってくると深さが倍になってきて2chの場合は8GWという長大なベクタを発生することができる。
 ソフトウエアの特徴の一つとして、同社テスタ専用言語のTDL言語と旧安藤電気のSUMMIT言語と二つの言語が動くバイリンガル・テスタになっている。

 

 

TS6000H+

 

 


『TS6000H+』の進化

 『TS6000H+』は、2002年の4月に販売が開始された。最初はロジック部分を開発してリリースされたが、SoC化に伴い、ロジック、アナログなどの複数のブロックが一つのデバイスに高集積化されてきた。これに対応するために、1台のテスタでロジックとアナログを含めて測れるように進化した。効率向上においては、当初テストピンが512ピンでリリースされたが、現在は768ピンで測定デバイスの同時測定数を向上している。2004年には、ユーザーのデバック効率を向上する目的で、GUIによるデバック環境を強化したAViPS(エービップス)をリリースしている。
 2006年以降は、デバイスの電源の数や電流の容量が増えてきたため、電源のチャンネル数を増やしデバイス電源強化を図ったものをリリースしている。さらに、ミックスド・シグナルの強化を図り、HRD2というオーディオ用デジタイザを昨年、SHFというRFのモジュールを今年リリースしている。
 また同社は、仮想テスト環境というコンセプトをテスト業界で初めて出している。これにより、実テスタで検証することなく、バーチャルなシミュレーション環境とテスタの環境を融合した環境で、実デバイスが製造される前に、テストパターンの動作を含めテストプログラム検証することができる。ロジックデバイスの分野では、ユーザーであるデバイスメーカーが開発をするときに、デバイスの設計情報は、RTLないし、ゲートレベルのデータで扱われている。仮想テスト環境では、これらのRTLないしゲートレベルのデータをユーザーのデバイスモデルとして、同社–TS6000H+用のテスタモデルと組み合わせ、実際のテスタが与えるテストパターンを、Verilogシミュレータ上で検証できるようになっている。デバイスをシミュレーションする環境とテスタが動く環境を統合して、実際の量産テストの仮想環境でデバイスモデルを動かそうという考えだ。
 「SoCデバイスにおけるアナログ集積率は今後ますます上がっていきます。それに合わせて、アナログを測定できるミックスド・シグナルのオプションを用意しています。アナログ測定オプションとしては、主にオーディオ帯域を測定するための高分解能なAWG/Digitizerとビデオ帯域以上のものを測定する高速なAWG/Digitizerといったバリエーションでリリースしています。」と沼田氏は言う。 同様に、プロセスの進化により、搭載率が高まってきたRF分野についてもRFオプション(SHFSM)の搭載を実現してきている。

 

共通言 STILへの取り組み

 同社は、テスタ単体だけでなくテストプログラムに関しても、IEEE1450で標準化されているSTILというテスト記述言語にいち早く取り組んできている。いままではデバイス設計者は設計だけすればよい、量産テストをする人はテストプログラミングして良品が出ればよいといった分業体制だったものを、STILという共通言語で両者を繋ぐものだ。共通言語のSTILに対して、同社のSTILコンバータを通し、同社のTDL言語をジェネレーションする。それを、仮想テスタ『Pre TestStation(プリテストステーション)』で検証する、あるいは実テスタで検証し、そこでデバッグしたものを再度上流のSTILにバックアノテーションできるという特徴があり、バックアノテーションするツールとして、『STIL-Write』がある。テスタでタイミングやベクタを変えたとき、設計情報を上流のSTILにバックアノテーションすることができる。ユーザーはSTILだけでテスト情報を管理することができるというものである。沼田氏は「STILによる標準化に取り組むことにより、プログラム開発が短縮できるという効果が実際に得られています。」と話す。

 
テストプログラムの高品質化に貢献

 同社は、テストプログラムの品質向上支援についても取り組んでいる。デバッグ前のプログラムを仮想テスタPre TestStationにロードし、電源とかレベルのテスト条件を抽出した後それがユーザーの思っていたものかどうかをチェックするというものである。設定値チェッカー、電源チェッカー、タイミングチェッカーという三つのチェック機能がPre TestStationの中に入っている。
 設定値チェッカーは、電源設定条件などが、ユーザーがプログラミングした意図に合っているかどうかをチェックする機能である。デバイスのテストでは、電源電圧よりも入力のドライバ電圧が高いことがあってはならない。プログラムミスでしばしばそういうことが起きるが、電源チェッカーはそれをチェックする機能である。タイミングチェッカーは、テスタの制約に違反しているかどうかを事前に検証する機能である。「このような各種チェッカーにより、事前にプログラムの品質を量産前にチェックしていただき、品質向上に対応しています。」と沼田氏は語る。

 

『TS6800』の特徴

 TS6800は、ミックスドの中でも特に車載用デバイスをターゲットにしている。車載の場合は、高精度の電圧計から高電圧、大電流といったDCモジュールが要求されるが、それに対するDCオプションもそろっている。特徴としては、パーピンでDC機能があり、並列に印加あるいは測定することができるため、スループットが向上できる。UVIモジュールは最大±128Vの電圧が発生または測定ができる。PWVIモジュールは、64V、8Aといった高電圧で大電流のDCモジュールである。PDMは100Vまで測定できる高精度な電圧測定計を搭載している。TS6000H+で述べたミックスド・シグナルのモジュールもすべてインストールが可能だ。
 もう一つの特徴として、テスト具の概念を変えたアプリケーション・ボックスによりテストソリューションを行っている。これは、1台のテスタで複数のデバイスを測定するときに、1枚のDUTボードを作りそれをコピーして90度ずつ回転させながら4枚組み合わせることによりマルチ測定に対応ができるものだ。DUTボードの作成によっては、しばしばDUT間で特性が違うことがあるが、DUT間の特性の差が無いようにするのが一つの目的である。もう一つの目的は、DUTボードの開発効率をあげることにある。DUTボードの設計費は4分の1、ボードのデバッグ期間が4分の1、ボード制作費は4分の3程度になるというメリットがある。量産における効果は、ボードが故障したときに悪いDUTだけをはずしそれだけを修理すればよく、その間も生産することができる。不良の確認時間も2分の1ほどで行うことができる。

TS6800

 

 

『TS6900S』の特徴

 本RF分野については、1990年代後半の携帯電話普及時期をきっかけに、国内数多くのユーザーへRFテスタの納入を実現している。

RFデバイスの進化は非常に早く、テスト項目もより多数、多種類となると共に、プロセスも、バイポーラ、BiCMOSだけでなく、CMOSプロセスでの高集積化が盛んとなっており、テスタに対しても、より高速、高安定、高ダイナミックレンジな測定、SoCデバイスとしてロジックと連携した測定が要求されるようになった。横河電機では、この要求に応えるべく、新たなRFサブシステム、SHFSMを開発し、今年6月にセールスリリースした。
 本オプションをRFテスタ「TS6900S」のRF信号発生、測定機能として使用することにより、RFデバイスをより効率良く測定したいニーズに応えると共に、先に述べた、TS6000H+への搭載を実現することにより、SoCデバイスにおけるRF測定ニーズへも対応した。
 本サブシステムのRF機能であるが、信号発生側のSHFSについては、周波数の切り替え時間を高速とした中で、位相ノイズも±124dBc/Hz typと高純度を保ち、200MHzの変調帯域を実現し、前モデルUHFSの特性を大幅に上回った。
 測定側のSHFMでも、測定機能部分に、スーパーヘテロダイン方式を採用したことで正確な測定とダイナミックレンジの拡大を実現した。 

 

 

 SoCはロジックからアナログ、RFまでの幅広い計測のため難しいところがある。沼田氏は「デジタル設計は速いが、アナログやRFは設計に時間がかかるだけではなく、でき上がったテストプログラムの完成度、測定手法、テスタのパフォーマンスにより、テスト時間に大きくばらつきが発生し、それがそのままテストコストに直結しています。このため、アナログやRFや知識が乏しくてもTATを短くできるようなデバッグ環境と最速なスループットを発揮できるテスタを提供する必要があると考えています。デバッグや検証はエンジニアのノウハウの出しどころで、経験と知識が必要ですが、デバックする人の立場を考えて、できる限り定型化できるツールや環境を提供していきたいと考えています。」と語っている。

TS6900S