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特別企画2 放送機器測定-2

 

ハイビジョンによる映画/テレビ撮影の新ツール『CINELITE』

リーダー電子株式会社

リーダー電子は、映画/テレビのハイビジョン撮影に欠かせない波形モニタでは高い評価を得ている。今回は、露出計を使わずに被写体の任意のポイントの明るさなどを測定できる新ツール『CINELITE(シネライト)』について、取締役 技術開発本部長 第1・第2技術開発部長 今村 元一 氏に話を聞く。

  

 

取締役 技術開発本部長

第1・第2技術開発部長

今村 元一

 

CINELITE開発の背景

 CINELITEは、波形モニタといわれるビデオ信号の測定器のソフトウエアで、特にビデオカメラの出力を監視し、適正なレベルに調整したり色を調整したりするものだ。
 ビデオカメラはもともとテレビ業界で使われていたものだが、テレビのハイビジョン技術が発達し、映画撮影にもハイビジョン撮影が使われるようになってきた。映画撮影に使われ始めたのが『スターウォーズエピソードII 』のころで、それ以降ますます増えてきている。
 ハイビジョン撮影の照明調整やカメラ調整などの撮影・記録される映像の明るさ(暗さ)の管理は、各種露出計と波形モニタによるビデオ信号の波形観測で行われている。また、最近増加している映画のハイビジョン撮影においても、基本的には同じ考え方で撮影・記録映像の明るさ(暗さ)の管理が行われている。
 フイルムとビデオの性質の違いからくる管理方法の違いが、映画における撮影において、特に米国ハリウッドの映画撮影現場から上がっていた。
 フイルムの時は、撮影するプロのカメラマンが熟練した感で感度とか露出を決め調整していた。それがハイビジョンによる撮影はフイルムに比べると明るさのダイナミック(コントラスト)が狭く、ビデオのレベル管理が必要になってくる。ところが、フイルムを使って撮影をしていた現場スタッフには、波形モニタを使ってレベルを管理するという概念が育っていず、波形を見てレベルを見るという技術的な面も慣れていなかった。そこで、ビデオ撮影のときに小型のピクチャーモニタで撮影現場に持ち込まれるようになり、モニタに映った状態を見て露出を管理していた。

 小型のモニタは通常のビデオ信号よりさらにダイナミックが狭く、ハイライトの部分やダークの部分が撮影者の意図した通りに映っていない場合も多くある。今は、ポスプロで修正する技術が発達しているが、それでも解決ができないような黒つぶれが起きていたり白が飛んでしまったりという問題が、現場では潜在的にあった。

 映画のビデオによる撮影が始まった当初から波形モニタを提供しているリーダー電子には、上のような問題のほかにも撮影現場から要望が寄せられていた。一つは、撮影に従事するスタッフは光の強さ、具体的には18%グレー反射などの基準に対しF-STOP値でいくつの範囲の光は撮影可能という概念がしっかりしているので、モニタ上で基準に対するF‐STOP値を表示できることである。もう一つは、波形観測を行わずに画面上からビデオレベルを簡単に数値管理ができれば、ポストプロダクション作業との連携もスムーズになるというものであった。「現場からは、波形を見てチェックすることはだめで、モニタに映っている絵から露出やビデオレベルを分かるようにして欲しいという要望があり、それが製品開発のきっかけになりました」と今村元一氏は語る。

 

 

 

 

CINELITEの製品化

リーダー電子は、上記のような要望を受け、以前開発したレベル測定技術と新たに開発した『F‐STOP測定法』の組み合わせを考案し、ロス・アンゼルス近郊に本拠地がある米国の大手機材レンタル会社と連携しCINELITEの製品化を実現した。製品化にあたっては、すでに撮影現場で活用されている波形モニタの付加機能として開発、同社の既存の波形モニタ『LV5700A』『LV5750』と新機種の『LV5800』のソフトウエアオプションとして設定している。
 「米国と日本では、映画撮影の考え方少し違うようで、CINELITEは、米国ではすぐに受け入れられましたが日本では浸透するのに時間がかかるようです。米国で製品ができ実証実験をしたときも、スタジオのセットを作り照明を当て、最適な露出バランスにするには、通常4時間くらいかかるのが、半分の時間で済み便利だという評価を得ました。
 波形モニタの波形を見るという基本的機能は変わっていませんが、表示が液晶化され、カラー化されてピクチャーも出せるようになりました。また、SDI信号の解析機能など付加機能が充実してきて、昔の機械の数台分が1台に納るほどに発達しています」と今村氏は話す。

 

 

 

MULTI SDI MONITOR 『 LV 5750 』

 

CINELITEのレベル測定機能

 CINELITEの機能は、従来の波形モニタをより使いやすくしたもので、基本的には中のレベルを測る機能の応用になっている。もともと、同社の波形モニタは波形を出すだけではなく、画素一点一点のデータを表示する機能があり、その応用になっている。同製品の一つ目の機能が、絵の中の情報を知りたいところにカーソルをあてると、輝度やRGBが表示されるレベル測定機能だ。通常の波形モニタのように波形で見るのではなく、デジタル数値で読めるようになっているものだ。
 輝度レベル測定機能は、撮影映像に意図した範囲の明るさ(暗さ)の情報が含まれているか、ピクチャー上の気になる位置にカーソルを移動し輝度レベルY(%表示)を測定し、意図しない白飛びや黒つぶれを確認することができる機能だ。これにより、波形モニタに熟練していなくても、ピクチャーモニタ上のカーソルで簡単に測定点を特定し、容易にレベル測定をすることが可能となった。
 RGBレベル測定機能は、輝度レベルYの測定と同様にピクチャー上の望む位置にカーソルを置くだけでRGBの値を測定できる機能だ。基準点と測定点というように、2点の測定点を同時に表示することができるため、複数の人が映る画面において肌の色合いと明るさのバランスを照明により行う場合、迅速に 作業を進めることができる。「例えば、3人が並んでいるところを撮影する場合い、3人の明るさのバランスが必要になります。特に肌の色が違うときに3人がバランスよく映るようにしなければならず、そういうことも米国では気にしているようです」と今村氏は語る。また、RGB表示では、表示画面左上に簡易RGBバー表示を行えるので、数字を見ずにカラーバランス作業を進めることができる。
 撮影した映像は、編集や画像の補整のためポストプロダクションが行われる。その作業を前提にしたときは、RGBの値が%より256階調表示が望ましいという要望があり、同製品では通常の%表示のほかに256階調表示を備えている。

 

 

CINELITE表示機能 F-STOP値表示で露出計測の時間短縮を
実現被写体近くに行かなくても露出のスポット計測が可能

 

 

CINELITEのF-STOP表示機能

 もう一つの重要な機能は、露出を知ることができるF-STOP表示機能だ。これは米国の撮影現場からも強い要望があったもので、反射型にしろスポットにしろ、通常の露出計はある1点を測定するのは苦手としている。また、測定器で測った数値とカメラを通して撮った映像とは直接リンクしていない。ところがCINELITEは、実際にカメラが撮った信号から、具体的なデータを知りたいという要求を満たしている。
 カメラを通した信号は、ビデオ信号になって波形モニタに入ってくるので、それをレベルとして測定して、そのレベルが実際に露出としてどのくらいかということを計算して出している。
 単独の露出計と違うのは、単独の露出計はじかに光を測っているので、絶対的な明るさを測定するものだが、同製品はカメラを通したものなので、決められた基準値の相対的なものになってしまう。ただ、それが記録され実際の映像となって行くものなので、どちらかといえば絶対的な明るさより、絵にどういう光のバランスで映っているかということが重要になる。

 具体的には、18%グレーという標準の反射率を持っているチャートを置き、そこの反射にカーソルを当て、その撮影のレベルに合わせてビデオレベルでどのくらいになるかを、照明の調整やカメラの絞りで調節して基準を決める。その基準に対し、人物や背景がどのくらいの明るさになっているかが表示される。
 このことにより、映画など日時をずらしたカット割りで撮影したときに、ライティングを合わせることが非常に大変だったが、同製品ではデータが残っているため簡単に前の露出を作ることができる。そのため、画面をそのままパソコンに保存できるキャプチャー機能をもっている。それまでは、ライティング専門のスタッフの記憶とメモで行っていたという。「ビデオ撮影が進むにつれ簡単化が図られ、スタッフも減らす傾向にあります。誰でも、高度なテクニックがなくてもライティングができるように、という流れも背景にあるようです」と今村氏は話す。

 

 

RGB 255 表示モード カーソル交点のR、G、B
それぞれの輝度レベルを0〜255の256階調で表示

 

 

LEVEL%表示モード カーソル交点の輝度レベルを%で表示

 

 

ガンマカーブを設定

 テレビ用のビデオカメラはガンマ特性を持っている。ガンマ特性はテレビのシステムからきているものだ。テレビのブラウン管はリニアな素子ではなく、入ってきた信号に対し明るさがあるカーブを持って変化する素子である。本来なら、信号がリニアになるようにテレビ側で補正するのが本当だが、白黒テレビの仕組みを作ったときにその補正を放送局で行うという仕組みにしてしまった。そのため、カメラの出力をノンリニアにして、放送電波で飛ばした信号が家庭のテレビに入り放送として出るときにリニアに戻る、という仕組みなっている。そのために、ハイビジョンカメラを始め出力はノンリニアになっており、それをガンマ特性という。入ってきたビデオ信号に対して光の変化がリニアでないときは、ノンリニアになっているので、それを補正しながら計算しなければならない。テレビ撮影の場合は、ガンマ補整カーブはITU-R BT709規格に基づくので、CINELITEにはリニア出力になるように『0.45』という表示で補整カーブ標準が内蔵されている。
 ハイビジョン映画用の場合は、様々なガンマカーブが提案されており、撮影者がそのカーブを積極的に使い普通なら記録できないところもノンリニアを強くして記録するということ珍しくない。そのため、同製品では撮影に使用するカメラの絞り機能を用いて任意のガンマカーブを設定できる機能をもたせている。
 カメラメーカーはそれぞれのカーブを持っているが、各カメラメーカーの標準カーブを同製品の中に設定できるようにして欲しいという声もあり、まず、S-LOG、ハイパーガンマの各カーブに対応できるように進めている。
 「できるだけ応用しやすくしてもらいたいという希望もあり、メモリーを残して撮影がスムーズにいくために活用してもらいたいと思っています。テレビ撮影用ビデオカメラのカーブは決まっていますが、映画用のビデオカメラに関しては各メーカーによって考え方が違っています。さらに、各メーカーのカメラは撮影者によってカーブを変えられるようになっており、カメラマンが明るくしたりダークにしたりテクニックとして使われています。
 これからも、撮影現場のニーズを先取りする提案を続けていくのが計測器メーカーの使命と認識し、提案を行っていきたい」と今村氏は抱負を語る。
 ハイビジョンカメラの普及が著しい中、さらに高精細な映像世界も確実に歩みを進めており、映像品質管理の概念も多様化していくと考えられ、それに対応していく同社の今後に期待したい。

 

 

ITUR BT709のガンマ補正の場合

 

 

任意のガンマカーブ対応