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コンパクトで耐ノイズ性に優れたデータロガ 『Datum-Y』

 

横河メータ&インスツルメンツ株式会社

 

アナログメータと現場測定器の二つの事業を手掛ける横河メータ&インスツルメンツ。昨年4月、現場測定器の新戦力としてコンパクト、丈夫、高精度の3拍子揃ったデータロガ『Datum-Y』を投入した。ハンディクラス最高レベルの耐ノイズ性をもち、ノイズ環境下でも安定した測定を実現。広視野角のTFT液晶を採用し使い勝手の向上を図ったほか、ポータブルステーション型の『XL120シリーズ』ではModBusプロトコルを搭載し、多くの機器とプログラムなしで接続できるなど拡張性にも富む。技術部ハードグループ長の村上健二氏に製品の強みや市場の反応などについて聞いた。

技術部 ハードグループ長
村上 健二

 

 

データロガ『Datum-Y』

 

 

現場で簡便に使えるデータロガ

 横河メータ&インスツルメンツは指示計器(アナログメータ)と現場測定器の二つの事業を手掛ける横河電機グループの計測器メーカーである。会社設立は2005年10月で日は浅いが、横河電機が古くから手掛けてきた事業の継承とその発展という重要な使命を担っている。メータ事業の主力製品は携帯用計器、パネルメータ、広角度計器、トランスジューサなど。一方の現場測定器事業では、データロガ、キャリブレータ、クランプ電力計、直流測定器、標準抵抗器などが主力製品である。
 同社が力を注ぐのが製品開発。「技術者のリソースに限りがあるため、年間に多くの新製品を生み出すわけにはいかないが、常に新製品開発のプロジェクトが走っています」と技術部ハードグループ長の村上健二氏は語る。昨年4月に発売したデータロガ『Datum-Y』も、新会社発足後に開発した製品の一つだ。
 近年、工場などの現場では、紙ベースの記録計に替わって温度の測定や記録が簡便に行える電子化ツールが求められている。これに対し、従来の横河電機グループのデータロガは、研究室などで使用する高価な製品がほとんどで、現場向けの測定器がなかった。こうした需要に応えたのが『現場で使えるデータロガ』である。

 

 

 

 

キャリングケース                   本体スタンド

 

 

コンパクトで丈夫なつくり

  同製品は現場での使い勝手を考慮したさまざまな工夫が凝らされている。まず質量が約800gとコンパクトな上、きわめて丈夫にできていることだ。筐体そのものも丈夫だが、それだけでは誤って落としたときに角が破損しかねない。そこで、本体をラバーで覆うことによりさらに頑強にしている。
 ディスプレイには広視野角のカラーTFT液晶を採用、斜めからでも見やすくしている。端子台が着脱式であることも便利だ。現場で端子台に端子を接続するのは大変だが、同製品では本体から切り離して端子の接続作業が行えるため、オフィスなどで予め接続作業をすませておけば、現場では本体に差し込むだけでよい。端子台は8チャネルと16チャネル、M3のネジ端子台(16チャネル)の3種類があり、どれかを選択して使う。予め複数の端子台を購入しておき、取り替えながら使用することも可能だ。

M3ネジ端子台ユニット

 


 各チャネルは絶縁が施されているため、温度(熱電対、測温抵抗体)と電圧を混在して使用できる。熱電対は11種類、測温抵抗体はPt100、JPt100、電圧は最大50Vレンジまで対応する。このほか、アナログ入力は左から、パルス、メモリ、通信、電源は右から配線するため、奥行きのないスペースでも使いやすいという特徴もある。

 

  

ModBusプロトコル機能

 機能面の特徴として、筆頭に挙げられるのが豊富なインタフェース機能である。別売りの通信ケーブル(91011)を使用してパソコンや専用プリンタと通信できるRS-232、さらにUSB、LAN、RS485なども装備する。中でもRS-485インタフェースはポータブルデータロガでは珍しい機能だ。RS-232は1対1の通信に限定されるが、RS-485は複数点との通信が可能なため、通信回線を使って他の機器と接続できる。
 というのも、同製品は ModBusプロトコルという機能を搭載している。これは、他の機器で測定したデータを、通信を介して同器に取り込むことができる機能である。つまり、RS-485インタフェースとModBusプロトコルを活用することにより、必要な情報を必要なところからもってくることが可能なわけである。
 代表的なアプリケーションは、ModBusプロトコル搭載の電力計で収集したデータを通信で受けつつ、同製品では温度を測定するというもの。「電力と温度には密接な関係がありますが、従来はおのおのに測定したデータを後で時系列的に合わせる作業が必要でした。それが一つの測定器の中で、外部から来た電力データとDatum-Yで測定した温度データとを同時に収録できるので、総合的なデータ管理が行えるわけです」(村上氏)。
 またデータの保存には、16MBの内蔵メモリ、コンパクトフラッシュ型カード、SDカード、USBメモリ(USBメモリだけはデータコピーとしての使用に限定)の4種類を用意する。

  

  

Webモニタリング、Eメール配信で遠隔データ収集

 同製品はポータブル器ながら、収集したデータをその場で確認できる機能やトリガ機能、ファイル分割/メディア上書き機能など、豊富な機能を装備している。データ収集後に本体で全体のトレンドやアラーム出力状況、最大値/最小値などを確認できる。また、ロギング中に過去トレンドの確認なども行える。異常時の原因検出・解析を行う際に便利なのがプリトリガ/トリガディレイ機能である。それぞれ最大600回分の前後データから収集を開始する。
 同製品では、ロギングしながら指定時間(時間/分)で測定データファイルを分割する。また、保存先メディアのデータ保存容量がなくなった場合、過去の測定データを削除して新たにデータ作成する削除保存、測定中のファイル内の古いデータを上書きする繰り返し保存、保存を終了する停止、などの選択ができる。
 特筆に値するのが、Webサーバ機能とEメール配信機能である。現場に設置して計測中にアラーム設定のレベルを超えると、あらかじめ登録された人宛にEメールが発信される。登録者はオフィスにいてそのメールを受信したら、自分のパソコンからWebを通じて本体にアクセスする。パソコン上には本体と同じキー操作画面が現れるので、その場で状況を確認したり、遠隔操作を行うことが可能になる。この機能は、異常時のトラブルシューティングのほか、現場に行く前の準備にも役立つ。
 大きな工場では、現場とオフィスが離れていることが多い。その際、現場に着いてから、「あれを用意してくればよかった」と気がついても引き返すのに手間がかかってしまう。「現場で何もかもやろうとしても大変。Datum-Yならば、オフィスにいる間に準備をしておき、現場の人に『こうしてください』と指示を出すこともできるのです」と村上氏。

 

 

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ハードウエアのノイズ対策とソフトウエア評価が決め手に

 同製品は小さなボディに多くの機能を搭載するため、4枚の高密度基板が用いられている。だが、回路間や部品間の距離が短いだけに、結合容量が大きくなり、ノイズに影響されやすくなる。とくに測定器の各入力端子と接地間に発生するコモンモードノイズは大敵である。そのため、ノイズ対策には多くのエネルギを傾注したという。
 入力はマイクロボルトの微小電圧であるのに対し、接地の部分は何十Vという単位のことが多い。その間のギャップがノイズを発生させる原因にもなる。実際に「初めの頃は、インバータモータの温度を測っただけでも、値がおかしくなった」と同社ではいう。しかし、回路構成や基板パターンを徹底的に洗い直すことで、ノイズに強い製品を作り上げたのである。
 ノイズ対策と同様、力点を置いたのがソフトウエア評価である。同製品はアプリケーションソフトウエア『Datum-LOGGER』を搭載している。Datum-Yを最大10台まで接続して、パソコンからのリアルタイム測定や収集後のデータ解析、データ処理が行える優れたソフトウエアである。ただし、こちらも多くの機能を詰め込んでいるだけに、評価が大変だ。「ソフトウエアというのは、機能が10%追加されただけでも、その評価には何倍ものエネルギを投じなければならない」(村上氏)からである。実際に、ソフトウエア評価だけでも半年間の時間を費やしたという。

 

 

ポータブルステーションとポータブルデータロガ

  ところで、Datum-Yには、パソコンと接続してリアルタイム測定やLANによる遠隔データ収集などが行える高機能モデルの『XL120シリーズ』と、データ収集に特化したシンプルモデル『XL110シリーズ』の2モデルがある。同社では前者をポータブルステーション、後者をポータブルデータロガと呼んでいる。性能的な仕様は全く同じだが、XL110シリーズには通信関係の機能が省かれている。これは「記録だけを行いたい」という顧客向けのモデルである。
 ユーザーはそれぞれ目的に応じて使い分ければよいわけだが、「これからの拡張性を考えると、XL120シリーズのもつModBusプロトコル機能が大きなポイントになりそう」と村上氏は指摘する。前述したように、XL120シリーズでは ModBusを搭載した機器であれば、たとえDatum-Yでサポートしていない測定機能であっても、データ収集することができ、測定の世界を広げることができるからだ。
 「XL120シリーズをポータブルステーションと呼ぶのは、さまざまな機器のステーションとなって多くのデータ収集が可能なことからです。当社としても、次の製品展開につながる重要な機能だと思っています」(村上氏)。Datum-Yは発売後約1年を経過したが、新規顧客のほかリピータ需要も多く、今日まで好調な売れ行きを示している。