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高感度測定技術をコアに直流からRFまで製品ラインアップを拡大

 

ケースレーインスツルメンツ株式会社

 

 

マーケティングエンジニア         マーケティング部 部長
佐藤 香苗                 菊地 裕光

 

半導体特性評価システム『4200-SCS型』

 

 

“高感度測定”をコア技術とするケースレーインスツルメンツ。ディスクリート半導体をベースに組み上げる計測器には、世界中の支持者がいる。主力の半導体特性評価システムに加え、2年前にRF測定器の分野に本格参入、一段とラインアップが厚みを増している。昨年4月に発売したACS統合テストシステムは、半導体関係者やデバイスプロセス研究者のみならず、信頼性技術開発の分野からも注目されるなど、話題は尽きない。マーケティング部 部長 の菊地裕光氏とマーケティングエンジニアの佐藤香苗氏に、主力製品を中心とする事業の近況について聞いた。

 

 

高感度とスピードの両立

 ケースレーインスツルメンツは高確度、高感度計測器で知られる研究開発指向の計測器メーカーである。グループ本社は米国オハイオ州クリーブランドにあり、現在、80カ国の支社、代理店を通じワールドワイドでの販売・サポートを行っている。設立は1946年、創業者のジョセフ・F・ケースレーが小さな作業場を開設して、電位計やピコアンメータなどの電子計測器の製造を行ったのが始まり。
 小規模のメーカーとはいえ、開発・製造する計測器が微小な電気信号の測定にきわめて有効であったことから、世界の多くの科学者や物理学者から支持を集め、その名が知られるようになった。日本では1956年に代理店販売を開始、2001年に日本法人を設立した。正確には、ケースレーインスツルメンツ・インクの日本法人がケースレーインスツルメンツ(株)ということになる。
 「われわれのコア技術は高感度測定です」とマーケティング部部長の菊地裕光氏は開口一番、そう語る。アナログの直流技術を徹底して積み重ねてきた伝統は健在で、現在でも米国の同社の開発部門には、製品開発から離れて、アンプの感度の向上やノイズ対策などを学術的に研究する専門スタッフが置かれているという。「こうした基礎技術の蓄積があるからこそ、製品に応用された場合でも、同業他社との差異化につながる」と菊地氏。
 したがって、同社の計測器のコアとなる回路には市販のオペアンプなどは使われていない。ほとんどの製品はディスクリート半導体を使用して自前で組み上げている。理由は簡単。そうしないと性能が出ないためである。ただし、一昔前までは感度を良くすることだけで、あまり処理スピードは重視されなかったが、最近は感度と同時にスピードが要求される。実は、そのスピードに関しても、同社は他社に比べて一日の長があるという。高感度とスピードの相反する二つを両立させる技術をもつことが同社の強みなのである。

 

   

研究者、学者間で評価の高い半導体特性評価システム

  同社製品で最も市場競争力の強いのは、半導体評価試験分野である。日本市場では売上高の約4割を半導体試験関連が占める。中でも、研究者や学者から高い評価を得ているのが、半導体特性評価システム『4200-SCS型』だ。
 DC、I-V、C-Vさらにパルス試験を一つの環境で拡張した豊富な機能を持つオールインワン型の統合リューションである。Windowsベースのインタフェースのため、トレーニングは不要で、ワンクリックで連続試験を自動実行する。分解能は0.1fAという高感度だ。一昔前まで同社は直流製品だけを手掛けていたが、半導体を測定するときは、直流だけで印加し続けていると、熱が発生して特性が変化してしまう。そこでパルス測定機構の開発に本腰を入れ、今では直流にも引けをとらない技術を身に付けるまでになっている。約10年前からパルスモードの直流測定などを始めている。
 4200-SCS型が人気を呼ぶもう一つの理由は、SMU(ソースメジャーユニット)技術に長けている点である。SMUは直流電圧・電流の発生と測定機能を一体化させたもので、普通の製品が1象限動作であるのに対して、ソース(供給)とシンク(吸い込み)を可能にする4象限動作を採用。発生と測定のタイミングを制御することで、短時間に多様な評価試験が行えるというメリットがある。4200-SCSはオールイン型だが、半導体評価関連では『2600シリーズ』に代表されるソースメータもラインアップし、システム化のニーズに対応している。
 


 

見つけ難い問題を見つけ出すフリー・ストリング・マッチ機能

 OptiViewシリーズが初めて登場したのは2000年。 当時の製品は
OSにWindows98を採用、10/100Ethernet対応のものだったが、その後、ネットワークの普及進展に合わせて機能を大幅に強化。2007年2月に発売した最新バージョンのOptiViewIII はWindows XPを搭載、10/100/1000 BASE-T、1000 BASE-XX対応の仕様になっている。
 また同製品では、新たにフリー・ストリング・マッチと呼ぶ機能を搭載。従来、検知が難しかった非暗号化されたメール、Webページ、ファイルやドキュメント転送に含まれる特有の単語や語句のトラフィックを検知できる。また、貴重な帯域幅を浪費する可能性のあるストリーミング・メディア、あるいはセキュリティ・リスクによって問題を引き起こす可能性のあるP2Pアプリケーションなど、ネットワークでの使用が容認されていないアプリケーションを特定し、追跡することが可能だ。この機能を使用することで、より速やかに間欠的なパフォーマンス問題の診断が可能となり、従来、見つけ難かった問題を突き止め、トラブルシューティングに要する作業時間を大幅に削減できるという。

  

  

2年前にRF分野へ参入し事業領域を拡大

 一方、2年前にはRF計測分野にも参入した。ベクトルシグナルアナライザ『2820型』と、ベクトルシグナルジェネレータ『2920型』の二つの製品である。これらは、最新のRF通信機器やデバイスの研究開発および製造試験向けに設計されたミッドパフォーマンスの試験計測器である。最先端のRFおよびデジタル信号処理(DSP)技術を組み合わせ、再現性を損なうことなく高速にRF信号を測定・生成する機能をもっている。
 2820型と2920型はMIMO対応の製品であり、テストシステムを構成するのに必要なハードウエアとソフトウエアを備えている。また、単体の試験測定器として利用していたものでも、背面パネルの数本のケーブルを変更するだけでMIMOシステムの用途に使うことができる。つまり、ユーザーはMIMOシステムのためだけに新たな投資を行わなくても、必要なときに再構成すればすみ、コストの低減が図れる。またMIMOシステムは、2×2システムとして初期構成した後で、標準の2820型または2920型を追加することにより、3〜4チャネルにグレードアップすることも可能である。

 

 

ベクトルシグナルジェネレータ 『2920型』

 

 

ベクトルシグナルアナライザ 『2820型』

 

 

『2920型』 と 『2820型』 を使用したMIMO RF信号解析・生成テストシステム

 

 

大きなポテンシャルを持つACS統合テストシステム

 もう一つ、同社にはエポックメイキングがある。昨年4月に発売したウエハレベルでのデバイス特性評価向けのテストプラン開発・実行プラットフォームACS(Automated Characterization Suite:自動特性評価スイート)統合テストシステムがそれである。半導体業界やシステム・ソフトウエアの専門家、研究所などこれまでのパートナとの協調により開発されたもので、構成性、統合性、カスタム性という三つの設計思想に基づく、同社にとって初めてのプラットフォーム型ソリューションである。
 同テストシステムは、顧客自身で独自のテストモジュールやテストシーケンスが作成できる。統一されたユーザーインタフェースを持ち、自動特性評価、信頼性テスト、パラメトリックテスト、あるいはウエハ選別での簡単なファンクション試験などにも適している。
 「半導体の評価では、単に測定された結果だけを見るのではなく、相関関係や分散など、さまざまな角度から考察して判断することが求められます。その際、多くの計測器が必要になりますが、従来のように独立した計測器だと、それぞれの関係を一度に見ることが難しかったのです」(菊地氏)。
 ラックに収納された計測器を統合して、パフォーマンスを高めるのがACSソフトウエアだ。同ソフトウエアは、ウエハ記述、テストセットアップ、プローバ制御、自動化、サマリーレポート生成などの複雑な機能を自在に組み合わせてアプリケーションの実行を行う。一例を挙げると、同一のテストプランを研究用途(手動)と製造用途(フルオート)の間で容易に切り替えることができる。また、統合テストプランやウエハ記述の機能は、1枚のウエハ上でセットアップが可能である。また、プラットフォーム上で稼動するのは同社製の計測器に限らず、他社器でも使用が可能だ。
「ACSテストシステムは、今後何年にもわたり有効性を発揮できる特徴を備えています。今回は当社が得意とする半導体評価用のプラットフォームに特化しましたが、設計思想そのものは半導体に限らず、RF測定や電子部品評価など、他の分野への応用が十分可能です。われわれ自身、そのポテンシャルは十分に感じています」(菊地氏)。

 

ACS統合テストシステム

 

技術力に自信、知名度アップが当面の課題

  ところで、ケースレーの製品開発はすべて米国で行うので、日本のケースレーインスツルメンツの事業は営業とサポートが中心である。
 ただし「本社のエンジニアは頻繁に日本を訪れ、われわれと一緒に日本のお客様を訪問しているので、そこで得た情報が製品開発に活かされるケースも少なくありません」とマーケティングエンジニアの佐藤香苗氏はいう。また、同社が取り扱うのは標準品だけではなく、カスタム仕様にも対応する。実は、ケースレーグループは中国(北京)にラックシステムのソフトウエア開発拠点をもつ。「中国の開発拠点は当社にとってはとても重要です。われわれは、彼らと連携して、日本のお客様向けのカスタマイゼーションやプラットフォームのエンハンスを行っています」(佐藤氏)。
 一方、現在の課題はずばり、「知名度を上げること」だと菊地氏はいう。 「当社の社名にしても、お客様の数にしても、まだ十分に市場に浸透しているとは言えないと見ています。知っている人はいても、知らない人は全く知らないというのが現状です」(菊地氏)。

 しかしこれは、裏返せばまだ需要が見込めることでもある。現在、日本における年商は約20億円だが、同社では近い将来、それを2倍に高めることを目標に定め、そのマーケティング戦略の実践に余念がない。
 従来はどちらかというと、同社の製品は大学や研究所で使われるイメージが強かったが、ラインアップが強化されたこともあり、最近は企業の製品開発現場で使われる数も増えている。「お客様に性能や価格をきちんと理解さえしてもらえれば、売上倍増目標を達成する可能性はきわめて高い」と同社では技術力に自信を深めている。