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トップ > バックナンバー > 単相・三相 75A以下の機器の高調波電流・フリッカ規格試験に対応した、高調波/フリッカアナライザ KHA3000

 

単相・三相 75A以下の機器の
高調波電流・フリッカ規格試験に対応した、

高調波/フリッカアナライザ KHA3000

 菊水電子工業株式会社

現在、商用電源を使用する75A以下の電子機器に対しても、高調波規制が厳しく求められている。ヨーロッパでは、2008年初めにEN規格としてIEC61000-3-12が制定され、強制適応をしなければならないという状況になっている。
菊水電子工業では、従来機であるKHA1000の機能を向上させ、単相・三相75A以下の高調波・フリッカ規格試験を実現するKHA3000を発売開始した。3チャネルで三相交流の高調波、フリッカ、電力、位相差を測定することができ、品質保証や商用のEMCサイトなどでも幅広い利用が可能だ。

 


開発部門ソリューション計測課
チーフエキスパート
矢島 芳昭

 

 

従来機であるKHA1000の使い勝手をそのままに、さまざまな測定に対応

 菊水電子工業では、新しい計測器を作るうえで、計測プラットフォームという概念をもっている。この中で、極限までの共通化を図っているため、従来機のKHA1000をベースに短期間でKHA3000の開発が可能となった。ボタン配置や操作手順などを同じにすることで、従来機を使用していたユーザーにも違和感なく使えることは、大きなメリットといえる。
 一方、演算処理部のDSPの処理能力は一段高く設定している。今までのDSPでは、単相分の処理が限界であったが、KHA3000では最新のDSPと大容量のバッファメモリを採用することで、膨大な三相分のデータを高速に演算処理し、三相同時リアルタイム測定を実現している。また、将来の規格や機能追加にも対応できるような余裕をもたせた設計がなされている。
 75A以下の機器の高調波電流規格であるIEC61000-3-12では、Rsce(短絡比)やSsc(短絡電力)という特殊なパラメータの計測が必要となるが、一般的な高調波測定器ではエクセルなどの表計算ソフトや専用ソフトを使って計算を行っているため、測定が終了しないとそれらの計測値を知ることができず、試験に多くの時間を要していた。
 同製品では、それらの数値をリアルタイムで演算し、表示する機能が追加されている。これによって、規格に準拠しているかどうか、リアルタイムで確認することが可能だ。
 また、現在一般的に使われている単相対応・1チャネル入力の計測器で、三相交流の測定をする場合、1相ずつ測定しなければならない。高調波電流測定であれば、測定時間が長期間に及ばないためにそれほどの負荷や問題にはならないが、電圧変動フリッカ試験のように1回当たりの測定が2時間もかかると、三相すべての測定では6時間にもなってしまう。
 しかし、同製品では3チャネルの同時測定が可能なため、試験時間を1/3に短縮することが可能だ。電圧電流の位相差に加えて、U相/V相/W相の三相間の位相差も評価対象としている。この電圧の相間位相差もリアルタイム測定し、グラフ表示することが可能だ。
 このような計測器の場合、OSにWindowsを採用してシステム構築することが多いが、同社では組み込みOSを採用したため、ブート時間が短い。OSブート時のストレスやOS自体の不安定さ、電源を切ってしまった時の不安感を軽減でき、きめ細かいユーザーインタフェイスの実現を可能にしている。「PCレスということで、立ち上げが早いことは、ユーザーに喜ばれています。しかも、高い安定性と、難しい設定をしなくても測定できる使いやすさや安心感も好評です」と矢島氏は語っている。

 


KHA3000のベースとなっているKHA1000

 


様々なインターフェイスをもつKHA3000

 


リアルタイムの演算、測定を実現

 

 

 

 

ファームウエアを改善し、より高精度の測定を実現

 KHA3000では、ファームウエアの処理が大幅に見直されている。
 ファームウエアの設計次第で、内部演算のデジタルフィルタやFFTの演算方法や分解能などの違いから、計測結果がシミュレーション結果と数mAの変化が出てきてしまうこともある。同製品では、演算誤差を極力小さくする演算方法や32bit精度でのFFT演算を可能にすることで改善をはかっており、次数間高調波と呼ばれる電源周波数の整数倍以外の高調波成分をもつ変動する信号に対しても、シミュレーション結果と実測結果を100μA単位で合わせることができる精度をもたせたことで、高精度な高調波測定を実現した。
 また、32bit精度のFFTは、汎用的なパワーアナライザのFFTと同等の性能であるため、国内海外のメーカー問わず、遜色のない性能といえよう。パワーアナライザとFFT機能を特徴としている汎用機と比べてもまったく引けを取らない。「汎用機の場合、高調波、フリッカを測ることに特化していない製品が多いようです。KHA3000では、専用機の良さを活かして、他社との差別化を図りました」と矢島氏は語っている。

次数間高調波測定のあり・なしを1台で実現

 現在使われているコピー機やレーザープリンタなどは、動作時に電流が大きく変動するため、次数間高調波を多く発生しやすい性質がある。このような変動高調波を測定した場合、新しい規格で規定されたグルーピング処理と呼ばれる処理の有無で、従来方式との計測値に大きな差が出てしまうことがある。次数間高調波を測定しないようにして、従来の測定ができるようにできている製品も存在しているが、規格に適合しない測定となってしまう。
 厳密な適合試験をするためには、従来の規格であるIEC61000-4-7 Ed1で要求される、電源周波数が50、60Hzとも、16サイクルの幅でFFTを行い、高調波を求める必要がある。一方、新しい規格であるIEC61000-4-7 Ed2では、50Hzは10サイクル、60Hzは12サイクルと200ms単位でFFTを行い、高調波を求めることが要求されている。KHA3000ではこの2つの規格を簡単に切り替えることが可能であり、厳密な次数間高調波測定のあり・なしを測定することができる。現状の規格では、Ed1、Ed2のどちらを使っても良いことになっており、古い規格を使った場合には、試験レポートに古い規格であることを明記しなければならないと要求されている。
 「厳密な次数間高調波測定のあり・なしを1台で実装している計測器を提供しているのは、当社だけです」と矢島氏は製品のメリットとともに独自性を挙げている。この機能を1台で実現した上、リアルタイム切替で計測値を比較できることもユーザーにとっては頼もしい。

 

EMCテストサイトで求められるISO/IEC17025をサポート

 現在のEMCテストサイトでは、ISO/IEC17025という不確かさの付いた較正が求められている。
 同社では、外部の較正機関によるISO/IEC17025の較正サポートを行っている。ユーザーから、試験較正成績書の依頼があれば、有償で対応しているという。
 「いままでユーザー様が個々に行っていた較正を、当社が代行する形になりますが、一度の依頼だけでKHA3000がISO/IEC17025認証されたテストデータとともに届けられますので、大変喜ばれています」と矢島氏。
 国内では50、60Hzといった低周波交流電流の国家標準は存在するが、それを超える高調波の標準は存在していないために、2.4kHzまでの高調波に対して独自の較正方法を確立している。さらに海外の国家標準を使うことで、ISO/IEC17025に準拠したデータを取得することができるようになっているため、EMCのテストサイトでも信頼ある対応が可能だ。
 「以前から、高調波測定器の較正をすることに対しての要求はあり、何をもって確かとするか、何を基準にするかといった点が問題となっていました。我々は、社内で独自の評価システムを構築し、実際どのように較正されているか、明確にすることができます」と矢島氏は語っている。

 

専用アプリケーションを利用したデータ取得・解析

 一般的な三相モデルの測定器では、パソコンのアプリケーションソフトを利用して、実際の判定や測定を行うことが基本となっている。しかし、KHA3000では、実験室や現場など、状況を問わず使えることをコンセプトにしているため、パソコンなしでも使えることに主眼を置いた設計となっている。対応する規格の限度値や判定方法などのデータは、すべて計測器のファームウエアに内蔵しており、単体での判定範囲の広さは、他社製品に見られない特徴だ。
 さらに、EMCのテストラボや品質保証で利用されるデータ取得や解析、管理が可能な専用アプリケーションソフトSD006-KHAを同時発売している。その活用で、パソコンからのリモート制御を実現したり、高調波電流試験や電圧変動試験のレポートを出力することが可能だ。
 たとえばEMCのラボでは、被試験物を持ち込んで、データだけを持ち帰ることが多いため、そのデータを基にユーザーがグラフなどに変換して見ることが必要となる。KHA3000は本体だけでもテストレポートを作成できるが、SD006-KHAでは、EMCの試験結果をより分かりやすいグラフ付きのレポートとして作成することが可能だ。「たとえば同じテストサイトで以前に測定した同じ機種のデータと比較した時、高調波スペクトルの違いや異常があるかどうかの確認が容易にできるようになります」と、矢島氏は視覚的に情報を捉えることの重要さを説く。  


規格の変更に柔軟に対処し、現場のニーズに対応

 高調波規格の入れ替わりは激しく、2009年初頭には16A以下の規格であるIEC61000-3-2の改正が予定されている。もちろんKHA3000もこれに対応済みだが、今後も頻繁な改正が続くことが予想される。
 組み込みOSを内蔵している同製品では、このような状況にもファームウエアをアップデートすることで対応が可能だ。ファームウエアをコンパクトフラッシュメモリからダウンロードすることで、容易にバージョンアップが可能になる。これは、ラックマウントした状態であってもバージョンアップができる仕組みだ。
 この使いやすさに対する心配りは、「自分で使ってみて、不満な部分は極力改善しようとして設計した結果」で、矢島氏自身が設計者でありながら、製品を評価する立場にもあるので、ユーザーの立場で使いやすい製品を目指すことができたという。
 また、同製品のような高調波/フリッカアナライザは、メーカー開発部署やEMCサイト、品質保証を担当する部署など、大きく分けて3つの分野で使われている。特に三相交流の場合は、業務用のパッケージエアコン、大型のサーバ、業務用冷蔵庫や洗濯機などに加え、現在開発が進められているプラグインハイブリット自動車関係の機器なども測定対象となる。また、家庭用のエアコンのように外部のコンプレッサが三相で動いているが、屋内機は単相で動いているハイブリット機器のような、単相と三相が混在した製品の測定も可能となっている。
 「KHA1000では実現できなかった単相・三相75A以下の高調波規格の測定に対応したことで、世の中にあるすべての商用ラインにつながる機器がターゲットになりました」と、矢島氏が製品の応用性の高さを挙げているように、さまざまな分野で活躍が期待されている。

 


パソコンを使わずに試験条件の設定が可能


試験用交流電源の品質を確認


試験結果をパソコン上で保存・管理


EMCの試験結果をレポートとして出力