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移動端末のアプリケーション開発に最適なシグナリングテスタ『MD8470A』

 

アンリツ株式会社

  

マーケティング本部 プロダクトソリューション部
プロジェクトチーム
池田 満昭

 同本部 販売促進部   
製品群チーム
野村 亮介

 同本部 商品企画センター 
企画チーム3
齊京 勲


シグナリングテスタ『MD8470A』

 

大手計測・情報機器メーカーのアンリツ。モバイルコミュニケーション時代の今日、ワイヤレス計測分野の戦略製品の一つに位置づけるのが、携帯電話など移動端末アプリケーションの開発に最適なテスト環境を提供するシグナリングテスタ『MD8470A』だ。音声通話、TV電話、コンテンツダウンロード、メッセージングなどのUEアプリケーション機能試験を1台で実現。簡易なGUI操作により、面倒なテストケース作成の必要がない擬似基地局シミュレータだ。4年前に発売以来、好調な売れ行きを示す同製品の詳細について、マーケティング本部の池田満昭氏、野村亮介氏、齊京勲氏の三人に聞いた。

 

 

ワイヤレスアプリケーション開発を机上で実現

 アンリツはNGN(Next Generation Network)の構築を支えるさまざまなテストソリューションを提供する。携帯電話などのモバイル通信や無線LANシステムの開発・製造・保守に不可欠なワイヤレス計測、光計測・IPネットワークの円滑な運用を実現するIPネットワーク計測、ネットワーク全体のパフォーマンスやサービス品質の向上をサポートするサービスアシュアランスなどがコアとなる製品群だ。
 同社のワイヤレス分野の戦略製品の一つが2004年に発売したシグナリングテスタ『MD8470A』。計測器は通常、ある規格に合わせて端末を試験したり、故障した機器のチェックのために使われるが、同製品は、携帯電話など移動端末のアプリケーション開発用の計測器という新しいコンセプトの製品である。
 移動通信市場では、魅力ある端末やサービスの企画力、開発力がビジネス成功の要因になりつつある。それにはハードウエア開発や通信プロトコル開発だけでなく、アプリケーション開発を効率よく行うことが重要である。しかし、アプリケーション開発者が従来のような大型で高度な計測器を導入して使いこなすのは容易なことではない。そこで生まれたのが、使いやすさとコストパフォーマンスを追求し、世界の移動通信ネットワークを机上でシミュレーションできる同製品である。。

 

   

フィールド検証の負担を軽減

 シグナリングテスタは、ひと言で言えば(擬似)基地局シミュレータのことであり、最大の顧客は携帯電話メーカーの開発者である。携帯電話は、最終的には実際のフィールド(実網)で検証を行うが、開発途中でもさまざまな検証が必要だ。しかし、開発途中の製品には不具合がつきもので、その検証に実網だけを使っていると、時間と工数が多くかかってしまう。また、国内に実網が存在しない、たとえば海外でサービスされているGSM方式の検証を行うような場合は、なおさら実網の利用は困難になる。そこで、実験室で実網に近い環境を作り出し、開発途中で利用することで、フィールド検証の負担を軽減し、効率的な端末検証環境を提供しようというのが同製品の最大の目的である。実験室ならば安定した環境が得られ、不具合の再現性が高い上、どこでどんな問題が起きたかという解析が可能になるためである。 


 

グラフィカルな表示で使いやすさを追求

 同製品では、GSM/GPRS/EGPRS、W-CDMA/HSDPA/HSUPA、CDMA2000 1X/1xEV-DO Rev.Aに対応し、音声通話、コンテンツダウンロード、TV電話、SMS/MMSなどのUEアプリケーション機能の試験を1台で実現できる。対応周波数範囲は400〜2700MHzの帯域をシームレスにカバーしているため、マルチバンド端末の開発や、将来的なシステムの周波数拡張にも容易に対応できる。
 アプリケーション開発者は、音声通話やTV電話、パケット通信などの基本的な端末機能試験のほか、さまざまなシミュレーションが行える。たとえばマルチコールといって、パケット通信中にほかの人から音声着信の割り込みが入った時はどうなるか。さらにマルチコール中に別の人から連続して100通余りのショートメッセージが送られてきたらどうなるかなど、実網では起こりにくいような場面を想定したシミュレーションも行える。
 「実際に端末メーカー様では、そうしたストレスをかける試験をかなり行っています。つまり、実網に近い環境と、実網ではやりにくいようなことまで踏み込んで検証できるのです」(池田氏)。次に、同製品ではインタラクティブな基地局動作をシミュレーションするソフトウエア WNS(Wireless Network Simulator)により、GUIベースの簡単な操作により基本的な通信条件が設定でき、アプリケーション試験に必要なシミュレーション環境を実現できる。「8470Aでは、端末をつないで電源さえ入れれば、音声通話やパケット通信など、携帯電話の機能試験が簡単に行えます。これは、通信プロトコルを意識しないで、その上に乗っているアプリケーションソフトの検証を簡便に行えることを追求した結果、生まれた機能です」と販売促進担当の野村亮介氏は語る。実際に、呼接続の状態もグラフィカルにわかりやすく表示されるため、計測試験に関する専門知識がない利用者でも、画面を確認するだけで簡単に通信状況をチェックすることができる。
 ほかにも特徴はある。移動機対向試験用のソフトウエア CNS(Couple-UE Network Simulator)により、2台の携帯電話間での音声通話やTV電話、SMS/MMSなどの対向試験が行えることだ。従来だと対向試験を行うには、シミュレータが2台必要だったが、同製品ではミドルクラスの基地局シミュレータとして業界で初めて1台のシミュレータで2端末を同時接続できる機構を採用、1台のシミュレータが文字通り基地局となって端末間の検証が行えるわけである。
 さらに見逃せないのは、幅426×高さ221.5×奥行き281(mm)という筐体サイズ。それもそのはず、商品価値のコンセプトは『モバイルネットワーク・オン・ザ・デスク』であり、従来の基地局シミュレータの大きさを考えると、斬新なサイズだ。それで2台の端末を同時に接続できるのは、スペースやコストを考えるとメリットは大きい。

  

WNS(Wireless Network Simulator)

 

1台のシミュレータで2端末を同時接続できる

 

 

CNS(Couple-UE Network Simulator)

 

 

2つの基地局シミュレータを目的に合わせて提供

 では、同製品が開発されるまではどのようにしていたのか。同社では2001年より『MD8480A』という製品を販売してきた。8480も8470と同様の基地局シミュレータだが、8480の場合は利用者が試験を実行するためのテストケース(シナリオ)を作成することを基本とし、柔軟なインタフェースを提供。主に携帯電話と基地局間のプロトコル通信の検証用シミュレータとして用いられてきた8480をアプリケーション開発の検証に使用することも可能だが、テストケースは利用者側で作らなければならない。マーケティング本部でドキュメント企画を担当する池田満昭氏は「当時は第3世代の無線アクセス方式であるW-CDMAなどの規格がまだ明確に定まっておらず、規格の変更が頻繁に生じていました。こうした状況下では、お客様側である程度テストケースを柔軟に変更できる状態になっていないと、規格の変更に追随できないため、むしろ8480のようなテスタが歓迎されたのです」と説明する。
 その後、時が過ぎて規格がほぼ固まり、W-CDMAサービスが定着する。すると、今度は端末の種類が増え、機能もどんどん向上するようになった。たとえば、現在の携帯電話を見ると、音声通話やショートメール、TV電話などの基本機能に加え、高速パケット通信を利用した音楽ダウンロードやビデオストリーミングなどのサービスに対応できるよう、どの機種も1台で豊富な機能を装備している。こうした状況の中で、これらの機能を検証するのに、従来と同様にテストケースを一から作成し、接続性・機能性をテストするというのは、容易なことでではない。そこで開発したのが8470Aである。
 「規格もある程度こなれてきたことだし、お客様の間からも『実網のように簡単につながる試験環境がほしい』という要望が増えたため、簡単に使える擬似基地局シミュレータを作ることになりました」と同本部で商品企画を担当する齊京勲氏は語る。もはや通信プロトコルは確立され、接続できるのが当たり前。その上で動くアプリケーション開発こそが今後重要、と考えたわけである。
 では、8480が不要になったかというと、そうではない。今でも最先端の移動体通信規格は大きく動いており、それらを追随する際のテストツールは不可欠だ。その最適な機種が8480である。これに対し8470Aは、すでにサービスが実施され、量産モデルなどの端末の商用開発を行う際の検証フェーズで、より簡単に使えるシミュレータとして位置づけられている。したがって、同社では今後も、顧客に対しては試験フェーズに応じて2種類の基地局シミュレータを提案していく考えだ。
 

 

 

海外需要に加えノンセルラーも有望

 ところで、発売から4年間、8470Aの売れ行きは堅調に推移しているという。「前機種8480で移動機ベンダにガッチリ入っていたので、立ち上がりがスムーズに行ったほか、次から次に新しい需要が巻き起こったため」と野村氏はいう。
 現状では8470Aの顧客の8割強は携帯電話関連メーカーだが、とくにここに来て携帯電話以外の需要の伸びが著しい。たとえば、カーナビの通信機能テスト。海外で普及しているGSM方式は国内網が存在しないので、海外仕様の機能テストを基地局シミュレータで行うことを望む企業が増えているためだ。また、ソフトウエアハウスやサービスプロバイダにとっては、通信技術に精通する専門スタッフを用意することなく、早い段階で移動体アプリケーションの動作状況を検証できるというメリットがある。実際に、通信モジュールを搭載したパソコンが増えたことも、ノンセルラー需要の増加に拍車をかけているようだ。
 今後は日本同様、海外各国でも携帯電話機能のさらなる向上が予想される。8470Aはこうした海外需要をはじめ、携帯電話アプリケーションの激しい開発競争をサポートする一方、各種モバイルサービスへの適用が可能であり、そのポテンシャルは限りなく大きい。