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地球に優しいハイブリッド直流電子負荷装置『ELH-1005』

 

株式会社計測技術研究所

  

       パワーウエア部マネージャー
     竹村 広一郎

 取締役営業部門統括  
渡真利 泉  

 


ハイブリッド直流電子負荷装置『ELH-1005』

 

電源検査装置のパイオニアとして知られる計測技術研究所。同社は本年4月、リニアタイプの電子負荷とスイッチングによる回生負荷を組み合わせたハイブリッド直流電子負荷装置『ELH-1005』を発表した。電子負荷装置の基本性能を維持しながら、応答速度、負荷電流の脈動、小容量対応など、従来の回生負荷装置の課題を克服。使用中の電子負荷装置から置き換えるだけで、電力消費を最大で約64%削減できるエコ運転を実現する。取締役営業部門統括の渡真利泉氏とパワーウエア部マネージャーの竹村広一郎氏に開発の狙いや従来型回生装置との違いなどについて聞いた。

 

 

四半世紀を超える歴史をもつ電子負荷技術

 計測技術研究所は電源検査装置と映像関連機器のメーカーである。中でも1973年の設立以来、35年の歴史をもつのがパワーエレクトロニクス関連部門。現在では検査装置のほか、電子負荷装置、交流電源機器、安全試験器およびソフトウエアなどの開発・製造を手掛ける。設立当初は電源検査装置の特注品の受託製作からスタートしたが、1980年に電源自動検査装置の標準品『K-230型』を開発、自社ブランドメーカーとしての基盤を築いた。近年、とくに力を注いでいるのが電子負荷装置の分野。実は、K-230を発売した当時は電子負荷装置という名称は存在しなかったが、「その機能は今日の電子負荷装置につながるものであった」と渡真利泉氏は語る。
 負荷装置とは、熱や機械、電気などのエネルギーに対して、それから出るエネルギーを消耗させたり、吸収したりする装置のことだ。このうち電気エネルギーを消耗させるのが抵抗器であり、その応用製品としてよく知られるのが白熱電球や熱電器である。これに対して、機械的な抵抗器の代わりに半導体を使用して電気エネルギーを消耗させるのが電子負荷装置である。電子負荷装置は電源装置に負荷を与え、電圧や電流がどう変わるかなど特性を検査するときなどに使用する。最近であれば燃料電池の評価にも用いられる。

 

   

高周波帯域までをカバー

 電子負荷に関する同社の技術として、有名なのがマイコンを核とした計測の自動化である。実際に、業界に先駆けてマイコンベースで機能をパッケージ化し、操作性と高精度測定を両立した製品を生み出した。だが、強みはマイコン技術だけに留まらない。竹村広一郎氏は「マイコンはデジタル処理の部分であり、それも強みの一つですが、実はコアとなるのは、むしろアナログのほうです」と語る。そこに生きるのが同社の創業者であり、現名誉会長の似鳥憲治氏がもつアンプをはじめとする高度なアナログ技術である。中でも、高周波帯域での制御技術は群を抜く。
 「電子負荷では、高周波領域はあまり対象にしないのが一般的ですが、アナログ技術があるからこそ、300kHz帯域まで製品ライン アップが可能になったのです」(竹村氏)。高度なアナログ技術とマイコンによる利便性を統合し、製品としての価値を高めたところに同社の電子負荷装置の特徴がある。
 もう一つの強みは高速化技術。通常、電流を導体の中に流すと、導体がもともともっている抵抗値やインダクタンスによる影響を受けるため、大きな電流を短時間で変化させることは難しい。そこで回路と基板に工夫を施すなど、制御技術を駆使することで装置内部の寄生インダクタンスを低減させ、スルーレートの高速化を実現した。これにより、同社の電子負荷装置は真の抵抗負荷に近い動作が行え、さらに突入電流のない立ち上がり波形になる 同社の電子負荷装置の特徴は、幅広いラインアップを揃え、全機種ですべての負荷モードに対応できる点。具体的には、業界をリードする応答速度、限りなくゼロボルト付近から動作できる低電圧動作、同じ電圧モデルなら5台まで任意に接続して一つの負荷として制御できるブースタ機能、負荷の維持時間に合わせて定格を超えた負荷を実現できるExtreme Power技術などがウリだ。
 ラインアップには、最も汎用的な『Load Stationシリーズ』をはじめ、低電圧で大電流の負荷をかけることのできる『Load Edgeシリーズ』、1μsec当たり200A〜1000Aまでの高速応答を実現した『ELSシリーズ』、バイアス電源を搭載し、ゼロボルトから負荷をかけることのできる『ELZシリーズ』などがある。 
 


 

 

従来型リニア負荷装置  概念図

 

 

従来型回生負荷装置  概念図

 

 

リニアとスイッチングの“いいとこどり”

 このように多数の製品ラインアップをもつ電子負荷装置の中でも、最もホットな話題は、本年4月に発表したハイブリッド直流電子負
荷装置『ELH-1005』だ。ハイブリッドと言っても、ピンとこない向きには、回生機能をもつ電子負荷装置と言えば分かりやすいだろう。
回生とは、簡単に言うと、何かの形で一度使用したエネルギーをもう一度元に戻して再利用する装置だ。自動車にも使われているし、新幹線の新形車両や一部の電機メーカーのエレベータなどにも回生装置は使われている。
 負荷を与えることは、エネルギーを消費することである。従来の電気負荷装置では、消費したエネルギーはすべて熱に変えて大気中に放出していた。しかし、それでは非効率なので、できればもう一度電気エネルギーに戻せたらいい。同製品はそんな着想から生まれた。
 電源装置の試験用ソースについては、スイッチング化による高効率化がすでに常識になっている。だが、電子負荷装置については、回生技術はあるものの、普及には至っていないのが実情だ。その理由は、回生機能を付与した多くの市販装置がスイッチング方式を採用しているためだ。スイッチング方式は半導体のONとOFFの状態を高速で行って電圧調整するため、リニア方式のように半導体のリニア領域で制御して流す電流を制御する方式に比べると、エネルギー損失が少なくてすむという利点がある。しかし、応答速度やノイズ性能に劣るため、総合的な判断からユーザーはリニア型電子負荷装置からの乗り換えをためらったのだ。
 とくに問題となったのは、負荷電流が脈動する(電流リップルが大きい)ことだ。直流で受けたエネルギーをインバータで戻して回生する方法では、流すエネルギーの量がスイッチングしてから変動してしまう。これだと電源が常に振られている状態になる。また、回路特性により、ACに戻したときに負荷の品質が劣化するなどの問題もあった。したがって、回生装置はあっても、大電力用や電池といった、限られた用途にしか使うことができなかったわけである。
 これに対しELH-1005は、スイッチングによる回生負荷に熱で変換するリニアタイプの負荷部を融合することにより(ハイブリッド回生電子負荷)脈動を解消したほか、従来の電子負荷装置と機能面での差をなくし、ユーザーにとって置き換えが行いやすい回生負荷装置として開発されたもの。つまり、スイッチング方式とリニア方式の“いいとこどり”をした装置であり、回生機能をもちながら、電流応答やリップルのない負荷電流など、従来の回生負荷装置より優れた機能をもつ。また、従来の回生負荷装置は、容量として6kW以上が主流であったが、同製品では1kWと小容量回生も可能にした。
 測定機能としては直流電圧、電流、リップルノイズなどの電源測定器
としての基本機能をすべて揃える。したがって、検査や評価のためにデジタルマルチメータなどの補助測定器を用意する必要はない。同製品ではそれらの機能を含めて1台にコンパクトにまとめている。

  

 

ELH電流立ち上がり波形

 

 

リニア部+回生部の負荷電流立ち上がり(リニア部+回生部、入力電圧5V)
CH1:負荷端子電流 縦軸1A/div 横軸1usec/div(立ち上がりが急峻な波形)
CH2:回生部入力電流 縦軸1A/div 横軸1usec/div(ランプ状の波形)

 

 

フィードバック制御や回生効率の向上に苦心

 ところで、開発時には「リニアとスイッチングを組み合わせたものなので、トータルでのフィードバック制御が難しかった」と竹村氏は言う。ハイブリッドでは、それぞれの方式の制御をはじめ、二つを組み合わせた制御が必要になるなど、制御系が複雑になるためである。「制御系を安定して動作させるため、様々なシミュレーションを行いましたが、適切な解を見出すまでに時間がかかりました」(同)。このほか、一度使った電気を効率よく取り出す、回生効率も大きな課題だった。電子負荷装置は高電圧から低電圧まで、どのような電圧のものとでも接続しても効率よく回生できるようにしなければならない。「最大で約64%の効率が確保できことを確認した時には、胸を撫で下ろしました」と竹村氏。
 

  

第3の電子負荷装置

 電子負荷装置は、従来はリニア方式とスイッチング方式の2種類しかなかったが、ELH-1005は第3の電子負荷装置とも言うべきものだ。
 同社の試算によると、同社製のリニアタイプの電子負荷装置『ELA-1005』との比較では、1kWの定格負荷で連続運転した場合、1年間で最大5万6000円の電気代を節約し、最大で2.1tのCO2排出量を削減可能だという。同製品を使用する際、最も効果的と考えられるのはエージング時の利用だが、それ以外にも従来、電子負荷装置を使用していた企業ならば、単純に使用中の機種を同製品に置き換えるだけで電力消費が節約でき、CO2削減に寄与することができる。したがって、リニア型の電子負荷装置が使われてきたすべての分野が対象になる。たとえば、工場では、電気を消費して熱を発生させ、さらにその熱を下げるためにエアコンを使うというようなことが行われている。このような場合の節電対策用機器としての需要も期待できそうだ。
 「これまでだと、エージングの時などは電気を垂れ流しているような状態でしたが、この製品により“使いながら節約する”という新たな文化が生まれると思います。従来、当社の電子負荷装置の良さをなかなか理解してもらえないところがありましたが、『電気代を節約できる』という言葉は誰にでも理解してもらえます。この製品が電子負荷装置分野で大きなシェアを占めるようになると嬉しい」と渡真利氏はいう。